能楽の中でも最も人気のある「羽衣」のストーリーを解説します。
世界中にある白鳥処女伝説と通じるものがあると言われますが、
能の羽衣伝説はどのような結末を迎えるでしょうか。
またそこに含まれる意味とは?
お楽しみください。
ここは三保の松原。
松の枝に衣が掛かっている(舞台では橋がかりの欄干に衣が掛けられます)。
漁夫、白龍(はくりょう)が現れます。
のどかな春の景色、朝霞が立ちこめ、
空には月が残り
歌にも詠まれた美しい松原。
釣り人たちの小舟がたくさん出ています。
白龍が、浦(浜辺)の景色を見ていると、
大空から花が降り、音楽が聞こえ、
妙なる香りがあたり一面に薫ってきました。
これはただごとではないと、よく見ると
松に美しい衣が掛かっています。
そばに寄ってみると、色も香りも素晴らしく普通の衣ではありません。
家に持ち帰り、家宝にしようと思いました。
そこへ天女が現れます。
その衣は私のものと言います。
天人の羽衣といい、人間に与えることはできない、
返すようにと言います。
白龍は天人の羽衣ならば、国宝にするので
なおさら返せないと言いました。
天女は羽衣がなくては天にも帰れず、
地上にも天人の住むところはない、
どうしたらよいかと悲しみますが、
それでも白龍は衣を返しません。
ーーーーー地謡(コーラス)「涙が梅雨のように落ち、髪にさした花もしおれ、天人の五衰(臨終の衰えていく様)が目に見えて、思いもかけないことだ」「空をゆく雁が羨ましい。大空が懐かしいーーーーーー
白龍は気の毒になり、衣を返そうと言いました。
天女が喜び、受け取ろうとすると、
白龍は、噂に聞く天人の舞を見せてくれたら返すと言い出しました。
天女は、月の宮殿の舞楽を舞うことを約束し、返すように言います。
白龍は、衣を返したら舞わずに天に昇ってしまうのではないかと疑います。
天女は、天には偽りはないと言い、
それを聞いて恥ずかしく思った白龍は衣を返しました。
天女は羽衣を纏い、霓裳羽衣(げいしょううい)の舞(月宮殿の舞)を舞います。
ーーーーーーーー地謡「三保の松原の春の景色は、月世界のように美しい。天人が美しい東歌(あずまうた:宮廷の歌)を歌うと様々な楽器の音が満ちて、夕陽の紅が山影を映し、緑の色が波に浮かぶ。天上から花が降りくだる。」ーーーーーーーー
【序の舞】能を代表する、優美な舞です。
【破の舞】序の舞に比べテンポの速い舞。だんだんに天に上がっていく様を表しています。
ーーーーーーーー地謡「様々な東遊(あずまあそび:宮廷の舞楽)を舞い、天女は空に舞い上がる。天の羽衣は海の風にたなびき、三保の松原の浮島の雲、愛鷹山から富士山とだんだんと高く舞い上がり、かすみに紛れて消えていった。」ーーーーーーーーーー
これでおしまいです。
白龍の「龍」と、天女がつけている「鳳凰」その和合というテーマです。
皆さんは何の例えだと思われますか?
能の抽象的な表現は
想像力の羽ばたく余地を与えてくれます。
ゆったりとした時間の中で、思いきり想像の羽を広げてみてください。
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