令和六年 橘香会のご案内

令和六年 橘香会のご案内

令和6年10月14日(月祝)に千駄ヶ谷の国立能楽堂で、橘香会が開催されます。

このたび、梅若紀佳が、独立を記念して舞台を務めさせていただく運びとなりました。新たな一歩を見守り、応援していただければ幸甚でございます。何卒よろしくお願い申し上げます。

橘香会とは

「橘」橘の花は、梅若家の家紋です。梅若家は奈良時代の皇族である橘諸兄を祖先とし、橘は大切にされてきました。

「香」 二世万三郎は、最上の能は香り立つ芸だと表現しています。

「会」 初世万三郎の時代より100年近く続く別会(特別公演)です。

古今和歌集に

『五月(さつき)待つ花橘(はなたちばな)の香をかげば昔の人の袖の香ぞする』

という歌がございます。昔の人に思いを馳せ、お楽しみください。

橘香会のみどころ 名曲 能「熊野(ゆや)」 

桜が満開の春の明るい景色、美女熊野はその景色を見ながら故郷の母を思い、

帰りたいと悲しむ…

 謡尽くし舞尽くし、特にシテ(熊野)が母の長い手紙を読み上げる「文ノ段」は見ごたえが

あります。小鼓は、女性能楽師として第一線でご活躍の久田陽春子師にご出演頂きます。

・狂言「(はぎ)大名(だいみょう)」 人間国宝である野村万作師演じる無教養の大名と従順な召使によって

滑稽に展開される物語。秋の名曲のひとつです。

・能「望月(もちづき)古式(こしき) 緊迫感、臨場感のある仇討ちの物語。

 偶然再会した殺された主人に仕えていた小沢刑部友房と主人の妻子。さらにそこに仇である

望月も現れます。協力し合い、仇討ちを計画します。芸人のふりをし、謡や舞を見せ…

ハラハラドキドキさせる場面もありながら、謡、舞の見ごたえもある大曲です。

野村萬斎師にご出演頂きます。

能「熊野」のあらすじ

 平家物語 巻十に語られる平宗盛と熊野(ゆや)のお話です。

熊野は、遠江の国(静岡)池田宿の主人で、京の都で平宗盛に仕えています。

このところ、母の病状が思わしくないと聞き、故郷に帰りたいと、休暇を願いますが、

宗盛は今年の花見までは一緒に過ごそうと言われ、帰らせてもらえませんでした。

ついに熊野の一家の侍女である朝顔が熊野の母の手紙を持ち、現れます。

その手紙には、今生の別れが来る前に一目でも会いたいという切々とした願いがしたためられていました。

熊野は、急いで宗盛に手紙を持っていき、読み上げますが、宗盛は帰すどころか、清水寺の花見に同行するように言われました。

牛車に乗り、外の景色を見ると、熊野の暗く沈む心とは裏腹に、春爛漫の美しい景色、楽しげな都の様子でした。

到着し、心ならずも酒宴で舞を舞い始めます。

すると、急に時雨が来て、花を散らしてしまい、これを見て熊野は母を思う和歌を一首読み上げました。

その歌はかたくなな宗盛の心に届き、ようやく帰郷が許されました。

熊野は急いで、京を発ち郷へ帰ります。

能「望月」のあらすじ

安田庄司友治に仕えていた小沢刑部友房は、主人友治が出かけている間に亡くなってしまったことを知ります。

友治は同国(従弟)の望月秋長と口論になり、討ち取られてしまったとのことでした。

友房は、今度は自分の命が狙われていることを聞き、宿場町の守山の宿に入り込み、甲屋(かぶとや)という宿の主人になります。

友治の妻と子供の花若は、故郷を追われて放浪し、守山の宿にたどり着きます。

偶然にも友房が主人の甲屋に泊まろうとすると、友房は、二人が今は亡き主人の妻子であることに気づき、再会を喜びます。

するとちょうどその時、都での用事を済ませた望月秋長の一行が、宿泊のために甲屋を尋ねてきました。

友房は、敵の望月が来たことに驚き、天の与えた機会と思い、妻子にこのことを告げて、敵討ちの計画を練ります。

妻子を望月のいる座敷に上げ、妻は謡い、花若は舞い、友房は酒を飲ませて、獅子舞を見せ、望月がうとうとと眠気が刺した様子のところを襲い、本望を遂げます。

すっかり世代交代となりました。

若々しい梅若研能会の応援を

何卒よろしくお願い申し上げます。

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